むしろ、あまり好きではなかった。
というよりは、良くわからなかったというところでしょうか。
酒を飲み始めた頃は、
お燗酒といって年上の人たちが飲んでいる酒を飲んでも、
何の感動もありませんでした。
何のためにこの酒を飲んでいるのか、
どうしていつもお燗酒でなくちゃならないのか、
てんでピンとこなかった。
当然、ワインを美味しいと思い、面白いと思い、
日本酒だったら、「吟醸酒ならまぁいいか」と感じていました。
ごく普通の感じ方だと思います。
普通に現代の食事で育ってきたら、
お燗酒なんか、なくてもよい。
飲むべき場面もないし、
飲まなきゃならない理由もない。

でも、この料理に出会って変わりました。
中央線沿線に引っ越して、
この店に入って、
あぁ、もうワインなんかいらない、
吟醸酒なんていらないと、
身体が覚えてしまいました。
ひとり、店のカウンターに座って、
グラスに注がれる熱めの両関。
これでいいんです。
他のお客さんやマスターと話をするのもいいけど、
別に話をしなくても、
ほどよく焼けたヒレ、肝、レバー。
それから串巻き、短冊に八幡。
これに山椒をしっかりと振って食べます。
何て幸せ。
まるでお風呂屋さんで湯船につかっているような、
そんな居心地の良さとほろ酔い加減。
こういう店を名店と言わずに何と言う。
というわけで、
私はすっかり洗脳され、
月に一度は禁断症状とともに、
この店の鰻と燗酒を楽しみに通い続けているのです。
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